ほびあに覚え書き

キッズアニメ・ホビーアニメの分析考察をまとめていこうと思います。気が向いた時に書きます。

『レゴ ニンジャゴー』16話に見る主人公視点の変化

今年春より放送されている『レゴ ニンジャゴー』が面白いです。ハイスピードなシナリオと個性的なキャラによる掛け合いがとても魅力的で引き込まれてしまいます。

このアニメ、4月からの地上波放送はシーズン4からという強気ぶりだったのですが、実はシーズン1・2はYouTubeの公式チャンネルで無料で見ることができます。

 

さらに、4月から全10話放送されたシーズン4はGyaOにて期間限定無料配信中とのこと。

gyao.yahoo.co.jp

なお、プロローグとシーズン3は現在公式チャンネルで非公開になっているようです。シーズン3は地上波で全5話の総集編が放送されましたが、早く日本語でオリジナル版を見たいものです。

 

さて、地上波では第16話からシーズン5が放送されていますが、シーズン5では序盤からキャラの関係が大きく変化してきます。

伝説の救世主であるグリーンニンジャとして活躍してきたロイドが、ゴーストニンジャ・モローに取り憑かれ、敵になってしまいます。この事態に、四人のニンジャ・カイジェイコールゼンと仲間たちはどう立ち向かうのか…というのが今作のストーリー。

ここで、それまで中心となってきたロイドと、兄貴分的立ち位置のカイで主人公視点の転換が行われるのですが、その展開が非常に鮮やかなのです。

 

シーンの構造を見ていく前に、ロイドとカイの物語中の立ち位置を整理しておきます。

ロイドはプロローグとシーズン2のボス・ガーマドン卿(シーズン3以降はガーマドン先生)の息子で、シーズン1にて四人のニンジャたちを困らせるイタズラ好きの子供として初登場。その後シーズン2にて伝説のニンジャとして覚醒し、シーズン2後半からはロイドを中心にした物語が展開されていきます。続くシーズン3・4を通して名実共にニンジャたちのリーダーとして成長していきました。

一方カイはプロローグからの主人公で、物語はカイがウー先生と出会いニンジャになることを決意するところから始まりました。キャストクレジットでもいちばん上ですし、性格も熱血タイプ。しかもなんといっても赤という主人公カラーの担当ですから対外的には主人公に見えます。しかし実情としてはややヘタレな性格もあり、上述したように物語の中心は(シーズン3のメインだったゼンを除き)シーズン2後半以降ほぼロイドにあったと言えるでしょう。

このアニメの驚くべきところは、このことが作中でメタ台詞として実際に言われるところです。そしてそのメタ台詞こそが今作の主人公視点の転換の大きな鍵となります。

 

『レゴ ニンジャゴー』16話において、モブ警察官二人による以下の会話があります。

「なあ、もしニンジャになれるなら誰になる?」

「決まってますよ、カイだ。だって主人公でしょ?」

「違う、メインはロイドだ」

いきなりメタ台詞が出てきたことにも驚きなのですが、ここで悲しいまでにカイが主人公であることが否定されてしまっています。ここだけ聞けば、哀れカイよ…となるだけなのですが、この台詞が後のカイの行動を引き立ててくるのです。

 

もう少し詳しくこの台詞の構造を見ていきましょう。

前述のとおり、いくらカイが主人公的要素を持つとはいっても、前シリーズまではロイドが中心となって活躍していたため、視聴者の視点もロイドにあります。16話冒頭でも任務の指揮はロイドが執っていたため、エピソード単位で見てもロイドの視点を通して物語が進んでいたと言えるでしょう。

しかしそこに唐突に「主人公はカイではなくロイド」というメタ台詞が挿入されます。このメタ台詞によって視聴者の視点は感情移入を断ち切られ、俯瞰レベルにまでバックさせられるのです。いわば主人公や敵味方が誰なのかということを、キャラクターをフラットに眺めることができる視点です。

この台詞の直後、ロイドはモローに取り憑かれます。一旦味方ポジションから消え、主人公からも下がることになります。

 

そこからシーンはカイたち四人に移ります。ウー先生のカフェの開店を宣伝していた四人ですが、突然エレメントパワーが使えなくなり、大急ぎでウー先生たちのもとへ。そこでモローに取り憑かれ敵となったロイドに襲われますが、全員がその場を脱出しようとする中でカイだけが取り憑かれたロイドを助けようとします。

ロイドが幼い頃から修行の相手をしてきたカイは、16話冒頭では父親と別れ寂しがっていたロイドの傍にいることを約束しています。誰よりも仲間を想い、危険を顧みずに仲間を助けようとするカイの行動は主人公そのものです。このカイの主人公らしい行動で、今作の主人公がやはりカイであることが視聴者の意識として確認され、主人公視点の移動が完了するのです。

メタ会話一つで面白がらせながらも自然に主人公の転換を行う。非常に鮮やかな手腕です。

 

このように一見ギャグのような台詞が実は伏線になっているというのは、直近だと『プリパラ』23話の大神田グロリア校長の「プリ券をチョキる」という台詞と同じギミックです。ただ、主人公が誰かというセンシティブで構造レベルにまで寄る話を、それもメタ台詞で演出するということは簡単にできることではないでしょう。キッズアニメの伏線演出として理想形と言っても過言ではないかもしれません。

 

『レゴ ニンジャゴー』シーズン5では以上の主人公視点の変化から、仲間想いながらも気負いすぎてしまうカイにフォーカスしたストーリーが展開されるのではないかと見ています。さらに17話で明らかになったゴーストの弱点とカイの妹・ニャーのウォーターエレメントの覚醒など気になる話が目白押しです。まあロイドくんファンとしてはいつロイドくんが戻ってくるのかが気がかりなのですが、毎週楽しみに見ていこうと思います。